飲食店失敗の研究 第5回「急激な店舗買収で突如失速―出店支援資金に要注意!」
- 2008年9月10日 14:44
Gさんは、28歳でラーメン店を創業。東京都下の街で、小さいラーメン店をコツコツやっていた。 派手なところは何一つ無く、地元客を相手にしたベタなお店だった。味への評価は高く、店の外に行列が出来ることもしばしばだった。
Gさんは堅実に商売をしていたが、ラーメン店はひとたび当ると、キャッシュの貯まるのは早いものだ。 創業から2年目には2軒目を隣町に出した。 さらに何年もしないうちに、もう少し離れた都市に3軒目を出店する。
ちょっと流行ったからといって、調子に乗って短期間に何軒も出店して行く人も少なくない中、Gさんのペースには手堅さがあった。
転機はすぐに訪れる。
Gさんの店舗運営の手腕を聞きつけた知人から、店を一緒にやらないか?という要請を受ける。 ラーメンとは全く別の飲食業態だったが、そんなことは実は本論ではない。この話には、店舗出店のための資金を提供するH社がバックにいたのである。
H社の担当者は、すぐにGさんに持ちかける。
「いま、廃業するラーメン店が沢山あります。買いませんか?」
これが後々、悪魔の誘いだとわかるのだが、無論、その時点ではわかるはずもない。
「Gさんのラーメンは素晴らしい。この味と評判なら、店舗数を一気に増やすことは十分可能ですよ。」
「でも、そんな資金はすぐに用意できませんよ。」
「資金ならこちらでご用意します。毎月の各店の売上の中から、少しずつ返済していただければいいだけです。」
H社の言うことを聞いて、「ずいぶんとうまい話があるものだ・・・」
と感心しきりのGさん。 言われるままに、新会社・J社を設立してもらい、Gさんは社長に就任した。
ほどなく、H社の仲介で、約20軒の店舗を同業のラーメンチェーンK社から取得する。 その余韻も残る数ヵ月後には、立て続けに別の2社から10数軒を買収。
J社は、設立から僅か1年で、40軒近い店舗網を有する立派なチェーン企業に急成長していた。
店舗を手放すほうには、理由がある。その殆どは営業不振だ。その営業不振の原因には、いろいろある。「立地」「市場と商品のミスマッチ」「価格政策の失敗」「サービスレベル」など多くの要因から、つきとめなくてはならない。
原因がわかっても、すぐに有効な対策を講じることができるケースは、実は少ない。仮に対策を講じても、すぐに結果が出るわけでもない。
反対に、立地が悪いなど、初めからお手上げ状態の店舗も含まれている。
「これから1軒1軒、ブラッシュアップしていきますよ。」明るく語ったGさんだったが、、、
買収した店舗は、黒字も赤字もごちゃまぜだった。ブランドも整理して、これからという時だった。
急激な店舗拡大で固定費が飛躍的に増大したことに加えて、各店舗の運営を建て直す費用が予想外にかさんだ。
H社に対する毎月の返済も重くのしかかった。
好調な店舗であれば、毎月の売上の中から店舗のリース料を払うことは困難でないが、問題は赤字の店だ。
もともと、H社のスキームでは、審査が甘い分だけ、毎月のリース料は割高になっている。赤字の店では、リース料はおろか、家賃すらままならないところがいくつもあった。
こんな構造では、破綻は時間の問題だった。
ほどなく、J社は民事再生法の適用を申請した。
自分のキャッシュでやっているときには、慎重居士だったGさんも、目の前に上手い話を見せられたうえ、「資金は不要」の甘言に判断が狂ってしまったようだ。
悔恨の日々である。
(文中のアルファベットは単なる記号であり、実名のイニシャルではありません。)
この連載は、すべて実話を基に構成しています。(杭杉能美子)
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