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お酒・飲食店・経営に関するコラム

ワインブームとワインの誤解:その16 ~酸化防止剤無添加ワイン⑤~

  • 2010年8月25日 09:39
  • アクシュニュース

ワイン関連コラム ブーム的な売れ行きを示すワインの「誤解」を取り上げるこのコラムで、「酸化防止剤無添加ワイン」を4回にわたって取り上げてきました。 

 

「酸化防止剤無添加ワイン」はその誕生時から「誤解」をはらんでいるといえます。しかし考えようによってはワイン市場を活性化させる可能性も秘めています。では「酸化防止剤無添加ワイン」の誤解を解き、ワイン市場全体の活性化を目指すにはどうすればよいのでしょうか。

 

「酸化防止剤無添加ワイン」の最終回として、今回はそのお話をしたいと思います。

 

★「酸化防止剤無添加ワイン」の誤解を解く

「酸化防止剤無添加ワイン」の誤解というのは、「酸化防止剤」が用量、用法を守れば決して危険な添加物ではないだけでなく、むしろ通常は必要とされる添加物であるにもかかわらず、あえて使用しない「無添加」の商品をつくることで、さも「酸化防止剤」が危険なものであるかのような「誤解」を誘引している、ということです。

 

しかし、前回指摘しました通り巧みなマーケティングの結果、バズワード的ではあっても「酸化防止剤無添加ワイン」の売れ行きは順調であり、これまでワインを敬遠してきた消費者にもワインを手にとってもらえているわけですから、「酸化防止剤無添加ワイン」が誤解を招いているという功罪を追求するのではなく、裾野が広がって増えたワイン消費者に「普通」の他のワインを楽しんでいただき、ワイン市場全体の活性化に貢献できる状況にしていけたらよいのではと考えています。

 

そもそもワインというものは、産地、品種、生産年度などの無限ともいうべき組み合わせからとても多様なものとなっていて、その多様性を楽しむべきと言っても過言ではないでしょう。しかしそれゆえに「難解」という印象を持たれてしまっているのも事実です。また悩んで選んでみても必ずしも口に合わないことも間々あるわけで、お酒は好きでもワインを積極的に自分で選ぶことを負担に思われている消費者も多いことと思います。ワインはハードルが高いと思われているのです。そのハードルの高さを「酸化防止剤無添加ワイン」は感じなくさせてくれているのですから、そこをうまく利用してワイン市場全体を活性化させていけたらよいのではないでしょうか。

 

★「情緒的説明」ではなく「科学的説明」の必要性

「酸化防止剤無添加ワイン」のコラム第1回でお話ししましたが、「食品添加物」は、現在では「できるだけ使わないほうが良い」ものの「使用する場合は使用量や表示を厳密に管理」すれば問題はない、という共通認識があるものと思われます。そして「無添加食品」が必ずしも「安全」「安心」を保障するものではないという認識も、ある程度定着していると言えます。

 

ワインの「酸化防止剤」も早くそういう存在になってほしいとは思います。しかし「酸化防止剤」の安全性を訴える説明文などを見ていると、「昔から使われているから安全」というような情緒的な言い方の説明があまりにも多いように見受けられます。具体的な数字を明示したりするなど、もっと科学的に説明するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 

それこそ食品添加物には、「昔から使われて」いても危険性が明らかになって使用禁止になったものが数多く存在します。「昔から使われている」という説明には説得力がないのは明らかです。逆に、科学的に「用量、用法を守ればワインの酸化防止剤(=亜硫酸塩)は決して危険なものではない」という説得力のある説明をもっとすべきだと思うのです。

 

(数値を具体的に明示しての説明は、あまり目にすることはないとしてもそれなりに存在しますからそちらに委ねることにしてここでは割愛しますが、例えばジェイミー・グッド著「ワインの科学」などを参照されることをおすすめします。「酸化防止剤=亜硫酸」のトピックに限らず、この本はワインを職業としている方には一読をおすすめします。)

 

★「ワインの多様さを楽しむこと」をうまくガイドする

人間はどんなに楽しいもの、美味しいものであっても、単調に繰り返されるとじきに飽きるものです。普通のワインの銘柄の多さに対し、「酸化防止剤無添加ワイン」の品数は簡単に数えられるほどですから、いくら難しいことを覚えずに「酸化防止剤無添加ワイン」でそれなりに美味しいワインを楽しめるといっても、そればかりではじきに飽きてしまうでしょう。「酸化防止剤無添加ワイン」のほとんどが、あまり複雑性や深みのない、単調な香りと味わいのものですからなおさらです。

 

ところが「普通」のワインには他の酒類でも考えられないほどの多様さがあります。まずは、これを「ハードルが高い」と思わせずに「誰でも楽しむことができる」ということをうまく伝えることができればいいわけです。そして「ハードルの高さ」を隠そうとかするのではなく、そのハードルをうまく越えたときの喜びの大きさを伝えればよいと思うのです。ただ、始めからいろいろなことを伝えようとするのではなく、順番に少しずつ取り組まなければ、やはり途中で嫌になってしまいますので気をつけなければいけません。

 

変な例えかもしれませんが、歩くことができれば、足腰を鍛えていけばいずれ富士山にも登れるようになる、そこから見える景色や達成感は格別なものだ、というようなことと同じだと思います。今まで敬遠して飲んだことのなかったワインがちょっと好きになってきた、そうしたら次はガイドに付いて普通のワインにもチャレンジしてみる、というようなことだと思うのです。登山の初心者にガイドが必要なのと同じです。私たちのようなワインを職業としているものが、そのガイド役となるわけです。

 

しかし難しいのは、「酸化防止剤無添加ワイン」でワインを飲み始めた消費者に「酸化防止剤」の安全性をうまく伝えることでしょう。

 

★ワインを職業とする者の「酸化防止剤」の正しい理解と、それを促す教育の必要性

実は私も含めてそうなのですが、そもそもワインを職業としている者の酸化防止剤に関する認識が浅いことがこのような状況の大きな原因だと思います。そして「酸化防止剤」について知らされる、教えられる機会も少ないです。何か事件でもあってメディアなどで騒がれる、というような出来事がなくても、もっと業界内での「酸化防止剤」の認知度を深める活動があっても良いように思います。

 

そして、酸化防止剤は「呼吸器系などの疾患がなく用量、用法を守れば安全」ということを、科学的に説明することは可能なんだということを、消費者にもきちんと伝えられるということが重要と考えます。「みんなわかっている。大丈夫。」という環境ができてくれば、消費者の皆さんの「酸化防止剤」の誤解もいずれ解けてくるのではないでしょうか。

 

★「酸化防止剤」を使用している「普通」のワインの新たなマーケティング

ちょっと無茶な提案かもしれませんが、こうした動きと連動して、さらに例えば「酸化防止剤無添加ワイン」と同じようなデザインのラベルで、同じようなブランドとして通常のワインの販売する、というような方法はどうでしょうか。要は「これまで親しんできたブランドなら信用できる」という消費者心理を利用し、なんとなく体に悪そうという印象を払拭して、「酸化防止剤は決して危険なものではない」という印象を持たせてしまうのです。

 

「安全性」の科学的説明に加えて、そのようなイメージ戦略、マーケティング戦略を用いれば、「酸化防止剤」を敬遠していた消費者を、次第に「普通」のワイン愛好者にできるのではないでしょうか。

 

★「酸化防止剤無添加ワイン」消費者を、「普通」のワイン市場に取り込む!

これまであまりワインを飲まず、飲んでも「酸化防止剤無添加ワイン」くらいだった消費者を「普通」のワイン市場に取り込んでいくことが、私は可能だと思っています。そのためには、まず私たちが「酸化防止剤」について正しい見識を持ち消費者に伝えていくと同時に、多様な世界を楽しむためのステップにすぎないワインの「ハードル」を消費者が越えていくために、うまくガイド役を務めなければならないと思うのです。

 

 

 

個人的な都合で大変申し訳ないのですが、今回でひとまずこの「ワインブームとワインの誤解」コラムを終了させていただきます。今後も単発でコラムを書かせていただくことはあるかもしれません。そのときにはまた、宜しくお願いいたします。長きに渡って私のコラムをお読みいただき、ありがとうございました。

 

筆者自己紹介

ペンネーム:You

プロフィール:フランス料理店にて修業の後、最近まで都内大規模エンターテインメント施設にてチーフ・ソムリエをつとめました。

先日ソムリエ、ワインアドバイザー試験がありました。私は合格した方に必ず言っていることがあります。それは「合格はゴールじゃない。ここからが本当のスタートだ。」ということです。私も、今でもワインの勉強を続けていますし、わからないことはたくさんあります。試験の合格は本当に第1歩目だったと、いつでも思っています。

でも、その後、登山でいう「登頂」のような気分を何度も味わっています。それは、ワインの勉強を続けていたから経験できたことだと思っています。これからもやめられそうにありません(笑)。

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