2009年のボルドーのプリムール・セール
- 2010年7月10日 09:50
6月末で今年のプリムールの売り出しが終わりました。フランスは7月・8月はバカンスの季節に入ります。
2009年ヴィンテージは、当初、良年で知られる2000年級のヴィンテージだとの評価だったのですが、年が明けるころから、グレートヴィンテージとされる2005年を更に上回る年だとされ、プリムール・テースティングの大御所のロバート・パーカー氏が21のワインに100点になる可能性がある(プリムール段階では3~4点の幅をもって評価)と評価したことから、一気にボルテージが高まりました。
結果として、メドック1級(5大シャトー)の平均価格は570ユーロと05年の358ユーロから60%近く上昇し、08年の132ユーロからは、なんと4.3倍と、株式みたいな値動きになっています。例年は主要な買い手であるアメリカのワイン商は、あまりの価格高騰ぶりに、手控え傾向だったと伝えられています。
市場を支えたのは、ワインに目覚めてきた中国人。いまや香港はロンドンやニューヨークに匹敵するワインオークションの中心地になっており、5月下旬に開かれたヴィネスポ香港では、個人で2百万ユーロのワインを注文していった人もいたそうです。プリムール・セールも、その直前・期間中は、中国人の購入意欲を見極める為、新たなリリースはストップになる程でした。
ヴィネスポ香港の前は、2005年に対して110%程度でしたが、その後は125%以上でのリリースが多く、例年ではあまり価格変動が大きくないメドック2級クラスのワインの平均価格も05年に対して140%、08年に対して2.5倍と強気のプライシングが目立ちました。
なかでも人気は、シャトー・ラフィット・ロートシルトで、ラフィットが中国語の発音では "lai-fat"(お金持ちになるの意)に良く似ており、大変縁起が良く、官公庁・接待用のお土産として重宝されています。そのラフィットはシャトーのリリース前に、ボルドーの歴史始まって以来初めて(?)、先物市場が立ち、1本約13万円で売買されるほどの熱狂ぶりでした。結局、ファースト・トランシェでのリリース価格は550ユーロ(約6万円)でした。
プリムールのビジネスに5年携わっていますが、今年ほど、評価が分かれた年は初めてでした。ワイン・アドヴォケート誌、ワイン・スペクテーター誌とデカンター誌で評価が分かれるアイテムが目立ち、またワイン・アドヴォケート誌でもローバート・パーカーとニール・マーティン(パーカーの後継者と目されている)でも評価割れが多くみられました。二―ル・マーティンは、100点の可能性があるのは3つ(ラトゥール、ラフィット、ラフルール)だけとし、"2009年はぶどう畑全体のレベルをあげるほどのヴィンテージではなかった"とコメントしており、本当は、作り手や畑の位置で出来不出来が大きく、言われているより、難しい年だったのではという感触があります。
2005年と2009年でメドック1級(5大シャトー)の評価の平均点を見ると、パーカーは96.3点と98,6点ですが、比較的客観的な評価をするデカンター誌では、19.7点と19.5点(20点満点)となっています。
先日、デカンター誌に、新興国との競争もあり、ボルドーのシャトーの50%は深刻な経済状況にあるという記事が出ていました。この辺にも、今回の価格高騰の遠因がありそうです。
http://www.decanter.com/news/299622.html
いずれにせよ、ワインの味の評価という主観性の高いものに依存する、プリムール・セールの難しさと危うさを改めて感じさせた年ではありました。
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