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お酒・飲食店・経営に関するコラム

ワインブームとワインの誤解:その15 ~酸化防止剤無添加ワイン④~

  • 2010年6月28日 10:44
  • アクシュニュース

ワイン関連コラム最近、コンビニやスーパーなどで「酸化防止剤無添加ワイン」という商品名のワインを良く見かけます。前回は「酸化防止剤無添加ワイン」は、ワインの「敷居の高さ」を逆手に取ったマーケティング商品であるというお話をしました。

 

今回は「酸化防止剤無添加ワイン」を「機能系」という切り口から解いてみたいと思います。

 

★「酸化防止剤無添加ワイン」は「機能系」?

ワインの市況分析など際、「酸化防止剤無添加ワイン」は「機能系」として分類されます。しかし「ポリフェノール強化ワイン」などのようになにかを「添加」「強化」したものではなく、逆に「添加していない」わけで、「機能系」といわれても「そうなの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。実は私もそう思っていたのですが、考えてみれば通常とは異なる製法を採用し、特別な効用があるような商品名をつけているという点では、確かに「機能系」なのでしょう。

 

「機能系」飲料といえば、最近では「糖類ゼロ」「カロリーゼロ」をうたうビールやRTDReady to Drink/缶入りのチューハイやハイボールなど)が増えてきていて、売上も順調に伸ばしているようです。

 

それでは「酸化防止剤無添加ワイン」の「機能」とはなんなのでしょうか。

 

★「酸化防止剤無添加ワイン」の機能?

前々回などですでに触れましたが、「酸化防止剤」として主に用いられている亜硫酸は、その効果の強さゆえに、呼吸器系疾患をお持ちの方にはごく少量でも悪影響があり、一定量を越えて使用された場合は健常者でも呼吸器が強く刺激されてしまいます。

 

そのため通常のワインでは使用量の上限が厳重に定められており、十分な効果がありながら人体には無害な使用量で利用されています。しかしながらどんなに危険性がない範囲での使用といってもゼロではないので、その点を取りざたし亜硫酸を全く添加しないワインをわざわざ造ったわけです。つまり「酸化防止剤無添加ワイン」は、「亜硫酸の危険性を完全に排除した」という「機能」を持たせたワイン、というわけです。

 

★「機能系」=「マーケティング」

ところで、「薬」ではないという理由から「機能系」飲料は特保(特定保険用食品)であっても効用などを具体的に提示することは禁止されており、しかも広告などで「期待される」効果を表示することがあっても、その効果は「保証されるものではない」「個人差がある」などと書かれます。

 

また「酸化防止剤無添加ワイン」は、そもそも「危険性を排除する」という「機能」ですから、その効用、効果自体を具体的に提示しようがなく、逆に酸化防止剤(=亜硫酸)の危険性を訴えることになります。

 

こうした機能、効用を具体的に効果を提示できない点から、実は商品名などでうったえる「機能」というのはただの「宣伝文句」でしかないと解釈されます。そのため「機能」をうたう、あるいは「機能系」としての商品開発は、単なる「マーケティング」に過ぎないと言われてしまっているのです。

 

しかもこうした「機能」的な言葉は、「マーケティング用語」と言われるばかりでなく「バズワード」とまで呼ばれるようになってしまっています。

 

★マーケティングと「バズワード」

「バズワード」とは「一見、説得力のある言葉のように見えて、実は定義や意味があいまいなキーワードのこと。」(知恵蔵2010より)「世間、あるいは業界一般などの一定の一般的なグループの間で喧伝されてはいるが、その実態が明確ではない言葉を表している。結果として、その分野に明るくない人にイメージだけを押し付けたり、『よくわからないが凄そうなこと』を想起させることを目的とした宣伝文句として使ったりすることも可能であり、言葉だけが先歩きして広まることも多いため、事情を知らない多くの人は価値のある言葉としてとらえてしまうことがある。」(ウィキペディアより)という言葉のことです。

 

バズワードの「バズ(buzz)」とは、蜂の羽音が「ブンブン」いう様を表した英語で、バズワードとは「人を騒がせる耳障りな流行語を暗に表す」(知恵蔵2010)言葉なのです。そして「無添加」や「エコロジー」といった言葉は、単なるマーケティング用語、ひいてはバズワードと考えられてしまっているのです。「機能系」に関する言葉もまたバズワードだと考えられるわけです。

 

(余談ですが、FIFAワールドカップ南アフリカ大会で話題となっている「ブブゼラ」の音は、まさに「バズ」な感じですね。審判の笛の音までかき消されてしまうため、否定的な意見があるようですが、しかし「ブブゼラ」の音だけを消したテレビ放送などは逆に「さみしい」という意見もあり、人は勝手なことを言うものだと思わされます。個人的にはワールドカップはお祭りのようなものだと思っているので、賑わっているほうが良いように思っています。それにしても日本が予選リーグ通過したのは良かったです!)

 

酸化防止剤(亜硫酸)は呼吸器系疾患をお持ちの方でない限り、一定の制限の下で使用している限りは人体には無害です。そうした「安全性」を科学的にきちんと提示することなく「危険性」だけをとりあげているような「酸化防止剤無添加」というネーミングは、マーケティング的な用法であることは明らかで、「バズワード」といわれても仕方のない状況です。

 

でも、このように書いてしまうと「酸化防止剤無添加ワイン」を完全に否定しているように思われるかと思いますが、必ずしもそうではありません。

 

★「バズワードの効果」と「その後」

前々回分析しました通り、「酸化防止剤無添加ワイン」とはワインに馴染みのない方にもワインを手にとってもらえるように考え出されたマーケティング的ネーミングです。ですから、ワイン消費者の裾野を広げる効果があることを忘れてはいけません。「バズワードの効果」と言っては聞こえが悪いかもしれませんが、ワインというと美味しいものにいつも「当たる」ためには産地や品種などいろいろと覚えないといけないのですから、とりあえず覚えていなくてもワインを飲み始めることができる「機能系」という切り口は決してバカにできないと考えます。

 

ただ問題がないわけではありません。私が問題視したいのは「酸化防止剤無添加ワイン」の「存在」ではなく、そればかりが売れていてせっかく増えたはずのワイン人口が他の、つまりは普通のワインの消費者になかなか変わっていかないという現状です。

 

この状況を変えていくには「酸化防止剤は決して悪者じゃない」ということを、もっとうまくアピール必要がありそうです。でも「酸化防止剤無添加ワイン」を選んで飲む消費者に、「酸化防止剤の安全性」を説くというのは「あまのじゃく」な話なわけで、ちょっと難しいですね。

 

実はここが、この「ワインブームとワインの誤解」のコラムで「酸化防止剤無添加ワイン」を取り上げている核心です。「酸化防止剤無添加ワイン」でせっかく拡がっているワイン消費者の酸化防止剤に対する「危険性」「安全性」の「誤解」を解いて、ワインの楽しみをより広げていただきたい、ということなのです。これがうまくいけば、日本のワイン市場にはまだまだ大きな可能性があると思うのです。

 

 

 

しかしながら、よくある「酸化防止剤」の安全性を訴える文言を見ると「歴史的に長く使われてきたから」などと情緒的ともいうべき訴え方をされていることが多いのです。科学的な説明になっていないこうした主張は逆に「酸化防止剤」に敏感な人たちの神経を逆撫でしているようにも見受けられるのです。どうしたらうまく「誤解」を解くことができるでしょうか。

 

次回は、このトピックの核心、「酸化防止剤の誤解を解く」というテーマでお話したいと思います。

 

筆者自己紹介

ペンネーム:You

プロフィール:フランス料理店にて修業の後、最近まで都内大規模エンターテインメント施設にてチーフ・ソムリエをつとめました。

「エコ」や「ビオ」といった言葉が「マーケティング用語」「バズワード」だという指摘を初めて読んだとき「そこまで言わなくても・・・」という気持ちを抱かずにはいられませんでしたが、その後改めて世の中を見回したとき、そういう商品がいかに多いことかと思い知らされました。そうした商品を購入することだけで「エコ」活動をしているような気になるというのは、「欺瞞」かもしれない、例えばごみの分別をしっかりしなければ意味がないと自省している今日この頃です。

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