飲食店失敗の研究 第15回「系列店の従業員が使い込んだ余波で閉店」
- 2009年2月25日 15:29
ある地方都市の中心地。県庁や国の出先機関などの役所や大手金融機関などが立ち並ぶ一角に、スポーツバーのA店はある。
こんな場所にスポーツバーという意外性なのか、それともお役人や銀行員には愛好家が多いのかは定かではないが、開業以来多くの常連客に恵まれ、繁盛している。
スポーツバーといえば、大画面で海外のサッカーの試合などを中継し、ビールなどのドリンクと簡単なつまみ的な料理を出すというイメージが一般的だが、A店の場合には手をかけた料理がお客から評価が高い。夕食をしっかり食べる店としても定評がある。
そうやって賑やかに営業しているうちに、常連客はいろんなことを言い出すものだ。
曰く、「もう少し別の料理はないの?今でも美味しいんだけれど、ちょっと飽きてきたかな」
曰く、「スポーツはなくてもいいから、しっかり食べることに専念できる店が欲しいな」
お客はリスクを取らないから呑気なものだ。本当なら、こうした無邪気な要望などは軽く聞き流しておけばいいのだが、幸か不幸か、業績好調で資金が溜まっていた。また運良く(運悪く?)、オーナーが昔から付き合っていた仲間が事業に合流してくれることにもなった。こうした幸運が重なって、新たな店を近所に出店することにした。
スポーツバーA店から歩いて5分の場所に、焼肉B店がオープンした。この新しいB店には、A店の常連客が流れて行ったので、開業のときから営業成績は好調だった。しかも、この2軒の姉妹店は業態がまったく異なるため、カニバリを起すことなく、元からやっているA店も従来通り繁盛を維持していた。
こうした夢のような状況は、しかしすぐに暗転する。
A店の従業員がお客から預かったお金を使い込んでしまったのだ。スポーツバーのA店では、スポーツ愛好家のお客が中心であり、外部のアマチュア連盟が主催する大会に参加することが恒例となっていた。そのための参加登録をA店が代行しており、連盟に納付する登録料をお客から預かっていたのだ。
目の前に多額の現金があり、そのうえ管理が緩ければ魔が差すということも絶対ないと誰が言い切れようか?
姉妹店2軒の現金をかき集めて弁済しているうちに、会社は資金不足に転落。A店を守るために、やむなくB店を閉めることになる。B店はオープンから僅か半年で幕を降ろした。
この連載は、すべて実話を基に構成しています。(杭杉能美子)
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